2020.05.12

2020年新卒に贈る「レジリエンス講座③」~心のエネルギーを高める方法~

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鳥谷部大樹  2020年3月、住み慣れた東京から家族5人で沖縄県久米島に移住しました。サトウキビとパイナップル畑、バナナの木に囲まれた自宅オフィスから、well-being(幸せ)についての研究とワークショップ、幹部向けパーソナルコーチング、コーチングトレーニングをしています。

上昇に尽力するフェーズで役立つ3つのこと

今回は学術的な根拠をベースにして「上昇に尽力するフェーズ」について。

このフェーズで大切になることは以下の3つです。

 

【1】強みの活用

【2】より親密なコミュニケーション

【3】感謝の習慣

 

「下降に抗うフェーズ」でご紹介した3つの大切なことがすべて「行動」であったように、

ここで取り扱うこともすべて「行動」です。

読後は、直感的に自分にとって役に立ちそうだと思ったことを、アクションしましょう。

【1】強みの活用

新規営業で特別な成果も出せないまま、僕は職種異動となります。

次なるチャレンジのステージは、転職希望者を呼び込むエントリー部門。

web媒体の作成、求職者へのスカウトメールなどが日々の仕事となりました。

 

この異動は心機一転、社会人生活を仕切りなおすよい機会だと考える一方、

実際は営業で強化された非力なセルフイメージをそう簡単に手放すこともできず、

吹っ切れない不安な気持ちを抱いていたことを思い出します。

 

しかし、というか、だからこそ、続けてきたポジティブなアクションがあります。

 

それは、本屋に立ち寄るということ。

 

ランチ時間や帰り道、そして休日の待ち合わせまでの時間、

とにかく本屋で過ごしていたことを思い出します。

 

お金に余裕があれば本を買い、

本を買うお金が無くなれば必死になって立ち読みで読了していた。

 

「経験では先輩を簡単に越えられないけど、

知識でなら逆転することも不可能じゃない。」

 

どこかでこんな言葉を聞いたことが動機になり、

あわせて自分の強みを育てるためには本屋こそが最適だったからです。

 

みなさんは自分の強みを知っていますか?

 

強みは重要です。

 

強みとは、その人にとって本質的であり、簡単に行えるものであり、エネルギーの源である。

仕事において強みに注目するほうが弱みを克服しようとするよりもよい結果が生まれる。

 

これはポジティブ心理学が示す重要な研究成果です。

 

ポジティブ心理学は強みを以下の24種類に分類整理します。

(成り立ちなどの背景は割愛します。)

こちらのサイトで無料診断ができますので取り組んでみてはいかがでしょうか?

https://www.viacharacter.org/www

 

この診断によると、僕の上位強みは「向学心」だということがわかります。

2年浪人したので、診断時はおおそうか、そうなのか、、、という戸惑いも多少ありつつ、

しかし、好奇心をもって学び続けることが得意、というのは実感があります。

(ちなみに向学心とは勉強の成績とは無関係だそうですw)

 

ポジティブ心理学が教えるように強みにフォーカスすること。

そのためには、僕の場合は本屋に通い知性を磨くこと。

これが非力なセルフイメージを手放し、自信を取り戻す方法になると信じ行った

当時の僕の上昇に尽力する具体的なアクションだったのです。

 

エントリー部門の仕事の、特にスカウト業務に役立てるために、

門外漢のマーケティングやコピーライティングの本を読み重ねました。

その結果と言えるでしょうか、

当時、自社最高額の紹介料をいただいた転職支援は、

僕の1通のスカウトメールが始まりだったのです。

存在意義を少し高められた経験となりました。

【2】より親密なコミュニケーション

困難は自分で乗り越えていかなければなりません。

しかし、そのプロセスで誰かからの支援が力になることも多いでしょう。

 

ポジティブ心理学には親密な人間関係が力になることを示す研究はたくさんあります。

とは言え、力になる人間関係は一朝一夕に生まれるものではありません。

そのときのために、と表現すると打算すぎるかもしれませんが、

これまでどういう人間関係を自分は作ってきたのか、を否応なく問われるのが

自分が困難に陥ったときなのかもしれません。

 

助けてほしいと心を許して言える人がいるのか。

実際に助けてくれる人がいるのか。

「いる」と答えられる人はそれを育んできたとても幸せな人、

そして困難を乗り越える力を持つ人だと思います。

 

困難なときこそ、自分のその気持ちを、勇気を出してその人に話してみるといいでしょう。

このときこそ、自分の内に閉じるのではなく、より一層心を開く親密なコミュニケーションをしましょう。

 

人は生きていればネガティブな気持ちを経験する。

しかしそれを否定して押し殺すように振舞うとネガティブな気持ちはさらに強くなる。

よい聞き手にそれを話すことは、それを軽くし乗り越えていくことに役立つ。

 

これもポジティブ心理学者が上昇に尽力するフェーズで示す方法です。

 

一方、親密な人間関係に課題を持つ人もいるでしょう。

その場合は、今こそ自分のコミュニケーションの方法を変えていくチャンスです。

よい人間関係をつくるための第一歩は、「ありがとう」を表現することです。

言い慣れない「ありがとう」には違和感はつきものですが、

「ありがとう」は親密な人間関係への第一歩です。

 

こんなワークに取り組んでみるのもよい方法となるはずです。

【3】感謝の習慣

先に書いた「ありがとう」と重なるところもありますが、

「感謝」という心の姿勢がどれほどパワフルでポジティブに働くものか

ポジティブ心理学は次のような興味深い研究成果を示します。

 

感謝により、幸福度が高まりエネルギーが生まれる。

感謝により、ストレスが低減する。

感謝により、免疫系が改善され、頭痛や風邪が治る。

感謝により、人間関係が改善される。

 

僕自身がこのような感謝の働き、特に「エネルギーが高まる」ことに気が付くに至ったのは、

感謝とは縁遠い気持ちで生きているところに届いた1通の手紙がきっかけでした。

 

ある日、入社1年ちょっとが過ぎた頃ですが、彼女の母親(現・義母)から手紙が届きました。

晴れることのない心で仕事をしている僕のことを、彼女の話を通じて知っていたのでしょう。

手紙には叱責や激励とかではなく、静かな雰囲気でこんな言葉が書かれていたのです。

 

大変なときこそ、年長者の言葉に耳を傾けることが大切ですよ。

 

鳥肌もんなわけですw

彼女の母親に手紙という形をとりながらもそんな言葉を伝えられるとは。

背筋を伸ばして折り目正しく正座をしながら読んでいたに違いありません。

 

でも、このときにパッと目の前が開かれるような感覚が生まれ

まざまざと気がついたのです。

アドバイスしてくれる年長者の言葉に耳を塞いでいたな、と。

 

父親にもよく言われていたのです。

大変なのは、オマエひとりじゃないよ。

オマエなんかよりよっぽど経営者のほうがしんどい思いをしている。

大変大変言ってる心のどこかに、

いざとなったら親を頼れるという気持ちがあるならそれは間違いだ。

親が生きているうちに、しっかり自立しろ。

 

手紙の言葉で開かれた心に、大事なことが一気に流れ込んでくる感覚があり、

それらの源になった手紙に、義母に、強く感謝する気持ちがわいたのです。

何かが変わる瞬間を経験したのだと思います。

それは強烈な体験でした。

 

自分が不遇だと思っているところにも、きっと恵まれていることがある。

それに気がつくこと(気がつき続けること)でエネルギーが生まれる。

レジリエンスの理論的にも、自分の経験的にも、

これも上昇に尽力するフェーズで大切にしたいことです。

 

感謝を習慣にするためには、こんなワークに取り組んでみるのもよい方法となるはずです。

困難は希望というバトンに変わる

みなさんが困難を乗り越えた経験は、きっと誰かの希望となる日がきます。

 

僕自身を振り返っても、塞いでいた耳を開いたその日から、

先人が困難を乗り越えた豊かな経験が聞こえるようになったものです。

それが「自分も越えていける」という希望に大きく影響していることは事実です。

 

つまり、先人の困難は、誰かをその先に進ませる

希望というバトンに変わるもののように思います。

 

みなさんもいつか、希望というバトンを手渡してください。

自分の「レジリエンス・ストーリー」を分かち合うことで。

そのためにも、今自分が行えることに意識を向けて行動していきましょう。

 

以上で、2020年新卒に贈る「レジリエンス講座」は終了です。

ありがとうございました。



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鳥谷部大樹 
2020年3月、住み慣れた東京から家族5人で沖縄県久米島に移住しました。サトウキビとパイナップル畑、バナナの木に囲まれた自宅オフィスから、well-being(幸せ)についての研究とワークショップ、幹部向けパーソナルコーチング、コーチングトレーニングをしています。

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