
【夢支援】二つの海を、一つの人生で ─ THE DUALIST ─
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お疲れ様です。
採用戦略部の中元寺です!
本記事─ THE DUALIST ─待望の第四弾になります!
今回フォーカスするのは、ウィルオブ・ワーク ファクトリーアウトソーシング事業部の奥田 彩香さん。
第一弾の記事のその後の活躍をお届けします!
過去の連載企画もまだの方はぜひ、ご覧ください🏖


「休むのも、練習だ」──二刀流の焦燥を越えて見えた、世界への現在地。
冬の気配が忍び寄る12月。
東京ではコートの襟を立てる人々が目立ち始める頃、画面越しに映る奥田彩香の背景には、
宮古島の突き抜けるような青空と、24度の柔らかな陽光が広がっていた。
「一安心、というのが一番の気持ちです」
日焼けした顔に浮かぶのは、満面の笑みではない。
どこか深い溜息を飲み込んだ後のような、静かな、あまりに静かな表情だった。
カイトボード・フリースタイル。
カイト(凧)が掴む風の凄まじいエネルギーを、ライン一本を介して全身で受け止め、
海面から5メートル、10メートルと高く跳ね上がる。
滞空するわずかな数秒の間に、ボードを掴み、身体を反転させ、背中越しにハンドルを受け渡す。
重力と遠心力が複雑に絡み合うその華やかで過酷な競技において、
彼女は2025年、悲願の国内年間王者の称号を手にした。
だが、その表情に歓喜の爆発はない。
そこにあるのは、社会人アスリートとして、あるいは「レース」と「フリースタイル」という性質の異なる二つの海を往く「二刀流(デュアリスト)」の茨の道を歩む者としての、切実な安堵だった。
王者の冠を被りながら、彼女の視線はすでに、その冠すら意味を成さないほど遠く、
険しい世界の頂へと向けられている。

国内王者の笑顔の裏に滲むのは、世界の頂を見据える者特有の、峻烈な孤独だった。
10分間の狂騒と、3本の「レイブラ」
カイトボード・フリースタイルの大会形式は、残酷なほどにシンプルであり、それゆえに濃密だ。
ヒート(試合)時間はわずか10分。
その短い「狂騒」の中で、どれだけ難易度が極めて高く、完成度の高い技を繰り出せるか。
砂浜に設営されたジャッジテントからは、審判の冷徹な眼差しが注がれる。
高さ、スピード、トリックの複雑さ、そして着水の美しさ。
それらすべてがスコアリングされ、上位3つの技の合計得点で勝敗が決まる。
今回、奥田が年間王者を争ったライバルたちの顔ぶれは、この競技の特殊性を物語っていた。
「女の子のライバルは、中学生や高校生なんです。彼女たちはSNSにも練習動画を上げないし、成長の速度がまったく読めない。放課後も土日も、すべての時間を競技に捧げられる学生たちと、仕事を持ちながら戦う私とでは、そもそも伸びしろの計算式が違うんです。試合会場で彼女たちの姿を見るたびに、『今、あの子は何ができるようになっているんだろう』って、心臓がバクバクする。社会人が勝つには、勢いだけでは絶対に届かない領域があるんです。」
学生アスリートという「時間の怪物」たち。
彼女たちが無邪気な情熱で練習量を積み上げるのに対し、奥田が用意したのは、
徹底した「効率」と、極限状態での「勝負勘」だった。

重力、遠心力、そして恐怖。すべてを統べるかのような、「レイリートゥ・ブラインド」。
一歩間違えれば脱臼を免れない、年間王者の凄みが凝縮されている新技だ。
今年の春、彼女は宮古島での長い特訓を経て、一つの回答を手に入れていた。
新技「レイリートゥ・ブラインド(通称:レイブラ)」の習得だ。
身体をスーパーマンのように真っ直ぐに伸ばし、頂点で180度反転。
着水地点が一切見えない「ブラインド」の状態で、背中側でハンドルを持ち替えながら水面に降り立つ。
一歩間違えれば肩を脱臼し、顔面から叩きつけられる高難易度のパス技。
春の大会では、その恐怖と未熟さに打ち勝てず、失敗に終わった。
そして迎えた秋、千葉。舞台は富津岬チャレンジカップ。
海は凪いでいた宮古島とは対照的に、激しいチョップ(波)が打ち寄せるタフなコンディションだった。
どこでジャンプの踏み切りを入れるべきか、一瞬の迷いが命取りになる状況で、
奥田は「10分間の脚本」を書き換えた。
「前半は確実な技でポイントを積み上げました。無理にリスクを負わず、相手の出方を見る。そして最後の数分、勝負どころで『レイブラ』を繰り出したんです」
荒れ狂う波、不安定な風。
その中で奥田は、春の失敗を完全に払拭する跳躍を見せた。
「3回打って、3回決まった。1回もミスらなかった。その瞬間、自分の中で優勝を確信しました」
3本揃った「レイブラ」は、本数を重ねるごとに高さが増し、
侵入スピードが上がり、着水はより鋭くなった。
圧倒的なリードを確信した彼女は、残りの時間でさらにカイトを低く、
パワーを最大化させ、加点を狙うデモンストレーションのような余裕すら見せた。
10分間のセッションが終わったとき、砂浜のジャッジたちが付けたスコアは、
紛れもない「日本一」を示していた。
しかし、年間王者という巨大な成果を手にしてもなお、
彼女の心拍数は驚くほど速やかに平熱へと戻っていった。

世界と勝負する決意がさらに高まった瞬間だ。
年間王者の称号が、色褪せるほどの距離感
国内年間王者。
その響きは本来、全肯定されるべき勲章であり、酔いしれるに値する成功だ。
しかし、奥田の瞳に映る景色はどこまでも寒色のままだ。
「ぶっちゃけ……世界を見た時に、今の私にとって、この国内年間王者という結果は意味が全くないんです」
彼女が戦っているのは、目の前のライバルでも、物理的な波の高さでもない。
日本と世界で根本から異なる『競技の定義』、その圧倒的な構造の差だ。
「日本は得意な技を三つ揃えれば、ある程度勝負ができる。でも、世界は違う。レギュレーションそのものが別物なんです。バックロール系、フロントロール系、レイリー系……異なるカテゴリーすべてで高得点を叩き出さなければ、点数自体が積み上がらない。一つの武器を磨く『深さ』ではなく、すべてを完璧にこなす『総合力』。それが世界基準なんです」

日本という心地よい「ゆりかご」を飛び出した先にあるのは、自身のこれまでのスキルを一度解体し、
再構築することを迫られる残酷なスタンダードだった。
世界大会に出場したこともなければ、公式の最高級用具すら手にしたこともない。
映像の中で舞う海外選手の動きと、自分の感覚を重ね合わせる日々。
「ワールドカップの映像を見ていると、出場すること自体はそう遠くないと感じます。でも、そこで『戦えるか』と言われれば、今のままでは土俵にすら立てていない。だからこそ、一安心はしても、満足は一秒もできないんです」
その乖離を誰よりも理解しているからこそ、
彼女は「で、これからどうするの?」と自分自身に問いかけ続ける。
2028年の世界大会出場という遠い座標軸。
そこへ至る道はまだ霧に包まれているが、彼女は立ち止まらない。
今はただ、暗闇の中で足元の石を一つずつ、狂いなく積み上げていくしかないことを知っているからだ。
二刀流のリアル ───「お金、時間、そして筋肉」
奥田彩香というアスリートを語る上で、避けて通れないアイデンティティがある。
スピードを競う「レース(フォイル)」と、技の美しさを競う「フリースタイル」の二刀流だ。
これは、野球でピッチャーとバッターを兼任する以上に逃れられない相反するジレンマを抱えている。
「正直に言うと、やっていて純粋に面白いのはフリースタイル。でも、公式大会の歴史があり、スポンサーや社会的な影響力として重みがあるのはレース。どちらか一本に絞れば、もっと楽になれるんじゃないかという葛藤は、常に、それこそ毎日のようにあります」

数えきれないほどの失敗を共にした相棒の準備に余念がない。
二つの競技を並行して行う代償は、彼女の生活のすべてを侵食している。
道具を揃えるだけで、瞬く間に数百万円の赤字が積み上がる。
トレーニングメニューは二競技分に膨れ上がり、身体のケアを担当するトレーナーですら
「レース用の持久力と、フリースタイル用の瞬発的な爆発力、どちらの筋肉を優先してつけるべきか」と頭を抱える。

トレーナーさえも頭を抱える、二刀流の過酷な肉体改造。
「一番削られるのは、お金。そして、時間です。一式を揃えるだけで150万円、レースも含めればその倍以上の投資が必要になる。仕事をして、遠征費を稼いで、その合間に二種類の練習メニューをこなす。常に後ろから『時間が足りないぞ』という焦燥感に追いかけられている感覚です。大谷翔平選手の二刀流に例えるなら、使う筋肉も道具も、頭の使い方もまったく違う競技を同時にやっているようなもの。トレーナーさんも戸惑うくらいです(笑)」
それでも、彼女が片方の翼を畳もうとしないのは、二つの競技がもたらす相乗効果があるからだ。
「風が弱すぎれば、フリースタイルの練習はできない。でも、レース(フォイル)なら走れる。そこで繊細なカイト操作を磨くことが、結果として強風時のフリースタイルに活きてくる。逆に、一方で壁にぶつかったとき、もう一方の海へと意識を『越境』させることで、いい意味のリフレッシュになるんです」
行き詰まったら、別の海へ。
そのスイッチの切り替えこそが、彼女が折れずに前に進み続けるための生命線となっている。
ウィルグループという「盤石の安心感」

そんな時、ふと届く同僚からのメッセージが、彼女をまた広い海へと連れ戻す。
孤独な海でカイトと対峙する彼女だが、戦う相手は海の上だけではない。
SNSでも見たくない、聞きたくない言葉を拾ってしまうことがあるという。
そんな時、ふとした瞬間に「独りではない」と感じることがある。
それは、社内報『BIG SMILE』の記事に対する反応であったり、
Instagramに届く同僚からの何気ないメッセージだったりする。
「自分が所属する部署だけじゃなく、一度研修で一緒になっただけの人や、まったく接点のなかった別事業部の人からも『記事読んだよ、頑張って』と連絡が来るんです。それは、他の会社ではなかなかないことだと思う」
彼女が語るウィルグループへの信頼は、単なる「仲の良さ」を超えた、会社のDNAとして根付く強固な一体感だ。
「ここには、ありのままを伝えても大丈夫だという安心感があるんです。人事の皆さんが、どれだけの想いでどんな人を採用しているかを私は知っている。だから、まだ会ったことのない社員であっても、『ウィルの人ならきっと分かってくれるだろう』という盤石の信頼があるんです。弱音を吐いても、挑戦を笑われない。その安心感があるから、私は安心して外の世界に飛び出すことができる」

挑戦の苦しみも、王者の重圧も、笑い飛ばしてくれる仲間がここにいる。
そんな彼女が、ある友人にかけられた言葉に救われたというエピソードは、
全ビジネスパーソンにとっても示唆に富んでいる。
一分一秒を惜しみ、休むことにすら恐怖を感じていた彼女。
オフの日も練習メニューの組み立てに追われ、精神的な「余白」を失いかけていた奥田に、友人は静かにこう言った。
「彩香、休むのも、練習だよ」
その言葉は、彼女の中で硬く結ばれていた糸を、ふわりとほどいた。
「年齢的にも、競技レベル的にも、常に『焦り』がありました。一分も無駄にできない、練習しないと不安で押しつぶされそうになる。でも、『休み=練習』と定義し直したことで、休むことが『悪』ではなく、次のパフォーマンスのための『投資』だと思えるようになったんです」
自律性とは、ただ自分を追い込むことではない。
自分を適切にメンテナンスし、持続可能な状態で戦い続けること。
その真理に、彼女は辿り着いた。

二つの情熱が合流する、一つの航跡
「もし、カイトボードという競技に出会っていなかったとしても、私はきっと幸せな人生を送っていたと思います」
奥田は、迷いのない瞳でそう言った。

「大人が無邪気に遊べる世界」に飛び込み、弾ける笑顔の社員たち。
仕事ではアクティビティ事業を通じて「大人が無邪気に遊べる世界」を創るために奔走している。
それに留まらず小学生や障碍を持つ方向けの自己成長プログラムなど、
あらゆる人が好きな人生を歩めるプログラムの企画にも熱を注ぎたいという。
彼女にとって、仕事と競技は「余暇」と「本業」という切り離された関係ではない。
「仕事があるから、限られた競技の時間の質を極限まで高められる。遠征費を自分で稼ぐというプロセスがあるから、一回のジャンプ、一本のラインに魂がこもる。挑戦すること自体に意味があるし、その過程で得られる経験は、何物にも代えがたい財産なんです」
働き方と生き方が、一つの大きな円を描くようにリンクしている。
彼女にとってのWell-beingとは、単なる幸福感ではなく、
挑戦し続けることで自分自身の限界を更新し続ける「実感」そのものなのだろう。

仕事で稼ぎ、仕事で磨かれるからこそ、海での一分一秒が宝石になる。
2026年。
奥田彩香は、さらなる高難易度トリックの習得と、未知なる海外遠征へと身を投じる。
「貯金が尽きない限り、行けるところまで行きたい」と、いたずらっぽく笑う。
その視線の先には、千葉の荒波よりも高く、宮古島の空よりも深い、世界の頂がはっきりと捉えられていた。
焦燥と安堵。
理想と現実。
その激しいギャップの狭間で揺れ動きながら、彼女は今日も風を待ち、一人、海へと漕ぎ出す。
休むことを練習の一部として取り入れ、よりしなやかに、より強く。
二つの海を抱えた「THE DUALIST」の航海はつづく。

─── 編集後記 ───
連載「THE DUALIST」として彼女を追いかけた第二弾。画面越しに現れた奥田彩香さんは、年間王者という最高の結果を携えながらも、どこか自身を峻烈に律するような、静かな緊張感を纏っていました。
アスリートを射抜く光が強ければ、その影もまた濃いものです。結果を出すほどに向けられる無遠慮な言葉に削られ、「輝かしい挑戦者」という記号化されたイメージの裏側で、彼女は一人の人間として、剥き出しの孤独や焦燥と対峙していました。だからこそ、彼女が漏らした「休むのも、練習」という言葉が、深く胸に刺さりました。それは自らを追い込み続けてきた魂が、初めて自分に許した「戦略的な余白」に他なりません。
戸惑いすら隠さず「この仲間なら受け止めてくれる」と信頼を寄せる彼女。その盤石の安心感こそが、荒れる海で彼女を高く跳ね上げる踏み切り板なのだと確信しています。王者の冠に安住しない彼女の航海。その軌跡を、我々はこれからも特等席で見守り、心震わせる物語として届けていきたいと考えています。
(編集長 仲島修平)

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奥田さん
素敵なお話をありがとうございました。
奥田さんの夢が実現する姿をこれからも届けていきます!
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フリースタイルで優勝し、年間王者に。